前代未聞の千円ラーメン・「高倉 軒」
前回の経緯はこちら。
ついに今回、謎のベールに包まれたラーメン店・「高倉軒」のノレンをくぐった。
店内はカウンターだけの狭いスペ―スだが、中は割と清潔だ。
時刻は19時を少し過ぎたあたりだったが、客は俺一人。
カウンターに座った目の前には吸殻が入ったままの灰皿が。
恐らく店主のおばちゃんのものと思われる。
タバコを吸っていたのは百歩譲るとして、その吸殻をカウンター上に置いているのはどうなのだろう…などと、思っていると声が掛かる。
「ラーメンは一種類しかありませんがよろしいですか?」
「あ、はぁ、じゃぁそれで」
既存のラーメン屋によくある何気ないやり取りだが、言ってしまってから俺は即座に凍りついた。
確か、店の前の看板には「元祖とんこつラーメン 千円」とあった。
この店で出てくるのは一種類ってことは、即ちこの「元祖とんこつラーメン 千円」の事ではないか。
ただの豚骨ラーメンが千円もするというのだろうか? いや、そんな馬鹿な話はない!
きっと一種類というのは「うちは豚骨味一種類」って意味で、「元祖とんこつラーメン 千円」はきっと所謂"全部乗せ"みたいなデラックスなやつに違いなかろう。
いくらなんでも杞憂にすぎるよな、と思いながらふと目を上げると、壁の上に気になる張り紙を見つける。
「元祖とんこつラーメン 千円」…どうも、やっぱり、これしかないのかなぁ?どんどん追い詰められていく自分。
しかし、ここでくじけるわけにはいかない。ここは「一年以上の沈黙を破って開店したマボロシの店」なのだから。
極めてポジティブに考えてみる事にしよう。そうだそれがいい。
千円のラーメン一品勝負…もしかすると、物凄い自信のあらわれなのかもしれない。
手間ヒマかけた極上スープに、角煮や煮タマゴや白髪ネギやら明太子やらがワッサー入っているのだろう。きっと。
もう一つの張り紙には「特製トロ細麺を使用しています」の文字が。お、どうやらあったじゃないか。独特の売りが。きっとスゴイ特注の麺か何かなのだろう。
そんなムリクリな期待と一抹の不安を胸に(比率は1:9)、カウンターごしに厨房を覗き込んで、調理の様子をうかがってみることにした。厨房とはいっても、どっちかといえば台所というのが近い気もするが…。
そういえば、ラーメン屋に付き物のでかい寸胴が無い。豚骨店特有の、あの獣臭さも何も無い。あるのは改装したての建物のニオイだけ。
複数のガスコンロに火を入れ、家でインスタントラーメン作る時のような、小さめの鍋を沸かし始める。小さい鍋にはそれぞれモヤシ、やらお湯やらが入っているようだ。一体何をする気なのか、と思っていたらそのお湯に何か入れだした。何と乾麺だ。
マルタイラーメンとか、よく100円ショップで売っているような麺である。これが「特製トロ細麺」?えええ?製麺所のトレーも見えないし、かといって自家製という雰囲気でもない。
これは一体どのような特注乾麺なのであろうか。き、期待は深まる。あくまでも期待と言う事にさせてください。
しかし…手際が悪いのか、なんとも仕事が大変に丹念すぎる。注文してから、もうかれこれ15分は経とうとしていた。客は俺だけなのだが…。この期に及んで「自分、不器用ですから・・・」とかいわないでおくれよ。
オロシニンニクをすり、スープを張り、麺を入れてから、チョコチョコと具材をトッピングしているようだが、それが物凄く、遅い。これがマルタイラーメンなら、もうとっくにのびている頃だ。
いや、「特製トロ細麺」に限ってそんなことは無い。あってたまるか畜生。
それからさらに数分後、退屈で携帯でメールを繰っている目の前に丼が出てきた。
「おまたせいたしました~」
愛想は良い。このあふれる自信を見よ、というくらいだ。
ここはラーメンと引き換えに代金を払うシステムだそうで、おずおずと千円を渡してみる…。やっぱりおつりはないみたい。ホントに千円だったのか!
で、いよいよ当のラーメンとご対面なのだが。 …正直、微妙な感じだなぁ。
別途鍋でわざわざ暖めていた味付けモヤシだが、ごく平凡な味。自炊のオカズのような味だ。それに紅生姜がこれまた随分とのっている。いわゆる豚骨ラーメンでは臭み消しで入れるもので、通常は備え付けで客が好みで入れる。最初から、コンモリと入っているのはいただけない。刻みノリも大半が既に丼の奥底に沈んでしまってもうドロドロである。半熟卵は…特に味はしない。ごく普通の半熟卵である。で、チャーシューではなく、味の付いた豚のバラ肉が数切れはいっている。あとメンマが少々。
で、スープを飲んでみることに。…臭みは無い。無いかわりに、味気もない。
というかインスタント高菜豚骨味のスープに割と近い。背油が律儀に散らしてあるが、まぁ普通。じゃあ「特製トロ細麺」はきっとやってくれるだろう…。
あ……トロ麺ってノビてグニャグニャになった麺の事かよ!!
ん~~~、もう、なんでこんなラーメンが千円するのだろう。うまかっちゃんを自分で作ったほうがどれだけマシなことか。怒りを通り越してただただ呆れてしまった。おれはキツネにばかされてるのだろうか。誰か俺をツネってくれ。
俺はもう二度と行かないが、この記事を目にした読者様方には是非一度足を運んでみてほしい。なぜなら、後にも先にもこんなラーメン屋は二度と現れないであろうから。
そして、この店自体もう長くないであろうから。希少価値無形文化保護の一環として、騙されたツモリで騙されてみて欲しいと切に願う。そしてその際はお互いご愁傷様を言い合いましょう。
ついに今回、謎のベールに包まれたラーメン店・「高倉軒」のノレンをくぐった。
店内はカウンターだけの狭いスペ―スだが、中は割と清潔だ。
時刻は19時を少し過ぎたあたりだったが、客は俺一人。
カウンターに座った目の前には吸殻が入ったままの灰皿が。
恐らく店主のおばちゃんのものと思われる。
タバコを吸っていたのは百歩譲るとして、その吸殻をカウンター上に置いているのはどうなのだろう…などと、思っていると声が掛かる。
「ラーメンは一種類しかありませんがよろしいですか?」
「あ、はぁ、じゃぁそれで」
既存のラーメン屋によくある何気ないやり取りだが、言ってしまってから俺は即座に凍りついた。
確か、店の前の看板には「元祖とんこつラーメン 千円」とあった。
この店で出てくるのは一種類ってことは、即ちこの「元祖とんこつラーメン 千円」の事ではないか。
ただの豚骨ラーメンが千円もするというのだろうか? いや、そんな馬鹿な話はない!
きっと一種類というのは「うちは豚骨味一種類」って意味で、「元祖とんこつラーメン 千円」はきっと所謂"全部乗せ"みたいなデラックスなやつに違いなかろう。
いくらなんでも杞憂にすぎるよな、と思いながらふと目を上げると、壁の上に気になる張り紙を見つける。
「元祖とんこつラーメン 千円」…どうも、やっぱり、これしかないのかなぁ?どんどん追い詰められていく自分。
しかし、ここでくじけるわけにはいかない。ここは「一年以上の沈黙を破って開店したマボロシの店」なのだから。
極めてポジティブに考えてみる事にしよう。そうだそれがいい。
千円のラーメン一品勝負…もしかすると、物凄い自信のあらわれなのかもしれない。
手間ヒマかけた極上スープに、角煮や煮タマゴや白髪ネギやら明太子やらがワッサー入っているのだろう。きっと。
もう一つの張り紙には「特製トロ細麺を使用しています」の文字が。お、どうやらあったじゃないか。独特の売りが。きっとスゴイ特注の麺か何かなのだろう。
そんなムリクリな期待と一抹の不安を胸に(比率は1:9)、カウンターごしに厨房を覗き込んで、調理の様子をうかがってみることにした。厨房とはいっても、どっちかといえば台所というのが近い気もするが…。
そういえば、ラーメン屋に付き物のでかい寸胴が無い。豚骨店特有の、あの獣臭さも何も無い。あるのは改装したての建物のニオイだけ。
複数のガスコンロに火を入れ、家でインスタントラーメン作る時のような、小さめの鍋を沸かし始める。小さい鍋にはそれぞれモヤシ、やらお湯やらが入っているようだ。一体何をする気なのか、と思っていたらそのお湯に何か入れだした。何と乾麺だ。
マルタイラーメンとか、よく100円ショップで売っているような麺である。これが「特製トロ細麺」?えええ?製麺所のトレーも見えないし、かといって自家製という雰囲気でもない。
これは一体どのような特注乾麺なのであろうか。き、期待は深まる。あくまでも期待と言う事にさせてください。
しかし…手際が悪いのか、なんとも仕事が大変に丹念すぎる。注文してから、もうかれこれ15分は経とうとしていた。客は俺だけなのだが…。この期に及んで「自分、不器用ですから・・・」とかいわないでおくれよ。
オロシニンニクをすり、スープを張り、麺を入れてから、チョコチョコと具材をトッピングしているようだが、それが物凄く、遅い。これがマルタイラーメンなら、もうとっくにのびている頃だ。
いや、「特製トロ細麺」に限ってそんなことは無い。あってたまるか畜生。
それからさらに数分後、退屈で携帯でメールを繰っている目の前に丼が出てきた。
「おまたせいたしました~」
愛想は良い。このあふれる自信を見よ、というくらいだ。
ここはラーメンと引き換えに代金を払うシステムだそうで、おずおずと千円を渡してみる…。やっぱりおつりはないみたい。ホントに千円だったのか!
で、いよいよ当のラーメンとご対面なのだが。
別途鍋でわざわざ暖めていた味付けモヤシだが、ごく平凡な味。自炊のオカズのような味だ。それに紅生姜がこれまた随分とのっている。いわゆる豚骨ラーメンでは臭み消しで入れるもので、通常は備え付けで客が好みで入れる。最初から、コンモリと入っているのはいただけない。刻みノリも大半が既に丼の奥底に沈んでしまってもうドロドロである。半熟卵は…特に味はしない。ごく普通の半熟卵である。で、チャーシューではなく、味の付いた豚のバラ肉が数切れはいっている。あとメンマが少々。
で、スープを飲んでみることに。…臭みは無い。無いかわりに、味気もない。
というかインスタント高菜豚骨味のスープに割と近い。背油が律儀に散らしてあるが、まぁ普通。じゃあ「特製トロ細麺」はきっとやってくれるだろう…。
あ……トロ麺ってノビてグニャグニャになった麺の事かよ!!
ん~~~、もう、なんでこんなラーメンが千円するのだろう。うまかっちゃんを自分で作ったほうがどれだけマシなことか。怒りを通り越してただただ呆れてしまった。おれはキツネにばかされてるのだろうか。誰か俺をツネってくれ。
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by gesotoku
| 2005-10-07 11:09
| 池袋ラーメン戦記
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